秋山仁先生熱く語る
秋山仁先生熱く語る
あら、ジャック・スパロウがお疲れになってこんなところに??
秋山仁先生(1946年10月12日生まれ・天秤座)の登場は衝撃的でした。
太いバンダナを巻いて登場された先生は、数学者というよりは、ライブステージを終えたばかりのローリング・ストーンズのギタリスト?それとも、カリブの海賊ジャック・スパロウを真似た芸人さん、俳優さん?というような独特な雰囲気を醸し出していらっしゃいました。
すでに先月のことになってしまいましたが、
秋山仁先生のご講演を拝聴することができました。
仁と書いて、「ひとし」とお読みするそうです。
長い間、「じん」だとばかり思っていました。
理科大の出席日数が少なすぎて大学院に行けず、上智大に数学科が新設されるということで受けたところ、なんと一番で合格したそうです。
ただし、受けた人は一人だったということで一番。
そんな自虐ネタから入り、みんなを笑わせてくれるところは本当に芸人さんみたい。
今回のテーマは「得手に帆あげて」です。
得手に帆あげてというのは、秋山先生が尊敬されている本田宗一郎氏(1906年11月17日生まれ。蠍座)がよく使っていた言葉だそうで、秋山先生はいくつもの、本田宗一郎氏の名言を教えてくださいました。
多くの人は趣味の欄に音楽鑑賞、ゴルフ、園芸などと書いたりしますが、
趣味=数学の定理作り
と書く人は少ない。
だから、数学の定理作りを皆さんの趣味にしていただけたらと思っている。
などと、これまた笑わせてくれる。
本当に、話が面白いです。
1992年4月24日、かれこれもう25年前に、読売新聞の解説部のデスクである馬場錬成解説部次長が秋山先生の数学への取り組みを記事にされたそうです。
それが「算術から科学する数学へ」という記事です。
「日本の数学教育は難問早解きコンテストをやっているように思う。
1990年から日本は国際数学オリンピックに参加することになり、その選手団長を務めたけれど、そのときも難問早解きコンテストをやっていた。」
と先生は嘆いていました。
「本当は、難問を解くことは、数学において一番大事なことではない。
問題は時間をかければ、誰だってやがて解ける。
頑張れば、なんとかなるものなんだ。
それよりも、問題を探す力、不思議を探す力のほうが大切ではないかと考えている。
しかし、日本の数学教育はそれが疎かになっている。
問題を解くことのみに焦点が合わされていて、
数学の実験はとても少ない、
何故?どうして?が少ない。」
「来年センター試験が改善されるそうだけれど、
25年前の「算術から科学する数学へ」と書いたときから、
日本のセンター試験は何一つ変わっていない。
点とり術に長けたことが良いことになってしまったことが実に残念。
本当は数学教育は楽しいものだから。」
現在の教育が間違っているのでは?ということで、
秋山先生は3人の全く違う分野で活躍されている方々の意見を例にとって伝えてくださいました。
一人は劇作家の平田オリザ氏(1962年11月8日生まれ・蠍座)
「学校の試験で問われていたのは、学力ではなく、従順さと根性だったのだ」
二人目は戸部良一先生など歴史学者の皆様の書いた「失敗の本質」という本から
「戦前教育の反省として教訓に生かしてほしいこととは、学校秀才型タイプは想定内の範疇のことは得意とするが、想定外の事態に極めて弱い。想定外に対応できる人材を育てるためには、自分の頭で不思議を感じ取り、理論的に考察を進める学びに変えなければならない。」
三人目は経済同友会の長谷川閑史氏の指摘です。
「日本の技術者は自分たちには優れた技術力があると言うが、世界中の多くの人たちが欲しがる製品を思いつけなかったことこそ、日本の技術開発者たちが抱えている深刻な問題点なのだ」
秋山先生は2002年からの新しい教育課程「ゆとり教育」と呼ばれていたものの
数学分野から出た三人の委員の中の一人だったそうです。
あら、ゆとり教育、今、ひどい非難浴びているわ。
うちの娘たちもまたにゆとり世代よ~。
あの当時、教科書が薄くなったことより、学校から早く帰ってきてしまうことのほうが、
多くの家庭では悩みの種になったような気がするわ。
先生は、「あの当時、一番売れた教材が百ます計算だった。」と
ゆとり教育が世間から評価されていなかったことを嘆いていらっしゃいました。
うん、それは仕方ないのかもしれませんね。
その親の世代がゆとりではなく、日本式詰込み式教育で育っているのですから。
秋山先生は有名な駿台予備校の名誉校長でもいらっしゃるそうで、
「僕は受験のことは良く知っていますよ。なんて言っても駿台予備校の名誉校長ですからね。その名誉校長が受験生が勉強している問題を早く解く力・・・・本当にアレが必要な力なのかどうか、そうとは限らないんじゃないかって思ってるんですからね」
ここで秋山先生から一番大事な言葉が飛び出します。
「なぜ?どうして?という好奇心に裏打ちされた学びをしていかない限り、
将来、彼らの生活において役に立つもの、教育とは言えない」
そう確かにその通りです先生。
今の政治家、官僚たちを見ればよくわかります。
皆さま優秀な頭脳の持ち主で日本一の教育を受けていらっしゃるのに、
何故?どうして?がないから、従順に上の意見をただ聞くだけ、
おかしなことが起っていても、なぜ?がないから、言われた仕事を真面目にするだけ。
こんなことでは北朝鮮のミサイル、変わりゆく世界の動向、他国の大統領の心模様、大自然の猛威、原発の恐怖、それらすべてに想像力が働かないので、想定外のことには太刀打ちできないのでは?
数学の勉強だけでなく、日本はすべてにおいて教育改革をしないといけないのではないかしら?
先生は、ドナルド・キーン氏(1922年6月18日生まれ・双子座)が
日本の古典教育は間違っているというお話もしてくださいました。
めんどくさい文法をやって、すっかり古典を嫌いにさせている。
あんなことをやるから、好きになる可能性があるものの、みんな古典が嫌いになってしまうんだと。
「勉強は面白いことを伝えるのが最初だ」
「知的な野次馬根性が大事だ」
こういうことが大事なんだよーと強く発言されていました。
あ、もちろん基礎は大事ですよとも言っていましたから、ある程度のベースは大事ですね。その後、野口悠紀雄氏の超整理学の本の話に飛び、
その後、正三角形の穴をあけるオリジナルな回転ドリルを見せてくださり、
「多角形の穴をあけるのはわりと簡単だけれど、正三角形の穴をあけるのは一番難しいんだよ。とがっているからね。」とかき氷の機械のようなものを、笑顔で回していらっしゃいました。
最後に数学の定理作りの実践に入り、私たちに折り紙とハサミを用意してくださり、
発明したばかりという秋山先生の新発見定理で、しばしは楽しい数学の実験教室を体験しました。
秋山先生は理系の、数学者のバイブルと言われている高木貞治氏(1875年4月21日生まれ)の書いた「解析概論」という実に難しい本をなんと3度も読破しているとのこと。
普通の理系の生徒であれば、読むのもためらうような難しい本だそうです。
本当に好奇心いっぱい、好きだからこそ、3度も読まれたのではないのかしら。
秋山先生ご本人が「得手に帆あげて」「好きこそものの上手なれ」
そんな人生を歩いてこられたから実に説得力のある講演でした。
でも、「面白い」を人に伝えるのって、伝える先生が面白くないと、
無理なんですよね。
星占いの大家・故・銭天牛先生()1934年1月18日生まれ・山羊座は実に面白い先生でした。
どんなことを聞いてもちゃんと答えてくださいました。
大変な博学博識でどんな小さな疑問にも答えてくれました。
だから面白くて面白くて、星占いの勉強がやめられなくなり、
ついに星占い師になってしまいました。
もし、そんな面白い先生に出会うことがなければ、星占い師にはなっていませんね。
面白いって伝えるには、先生に本当の力が必要です。
本物の美味しいメロンを食べさせないと、メロンの美味しさがわからない子どもになるように。ホンモノの教師を学校に配置しないと、子供たちは今も、5年後も、10年後も、想定外のことに強い、素晴らしい政治家、官僚は成長することはありません。
サインを求めたら、秋山先生ったら
「恋する女は泣きをみる」ですって。
あらー、由美かおるさん(蠍座)と別れた後だったからかしら?
私、泣きたくないーーー。
秋山先生は本を三百冊出す予定だそうで、その時は盛大なパーティーを開催されるそうです。
先生、頑張ってくださーーい。